二十世紀後半に始まった生命科学における驚異的進歩の原動力が分子生物学であったことに異を挟む人はいないだろう。
大腸菌を使っての研究で爆発的に進んだこの潮流を動物の研究へと展開するにあたり、研究者の多くは培養細胞をその材料として使った。そしていつのまにか、培養細胞が動物細胞を代表するかのような錯覚に陥っていた。
 言われてみれば、多くの細胞と相互作用しながら三次元で生活している細胞と、二次元の堅い培養皿上でウシ胎児血清存在下で増殖している細胞とが同じであるはずがない。実際、培養細胞で見える現象のかなりのものは三次元では見えはしないし、血清が細胞の性格に大きなバイアスをかけていることもいまやよく知られている。
 わたしたちは、今、この培養細胞の呪縛を逃れる手段を手に入れた。多光子顕微鏡を使ったライブイメージングである。
 とはいえ、この新しく始まった研究手段はだれでもすぐに開始できるわけではない。いまはまだレーザの値段が高く、多くの大学では共用機器として使える程度である。それも、顕微鏡の管理を担当している研究者の得意分野があり、それ以外の臓器の観察は試行錯誤である。
 そこで、「蛍光生体イメージ」領域では、多光子顕微鏡を使ったライブイメージング研究を少しでもお手伝いするために、臓器ごとのライブイメージングの手法を公開することにした。
 日本がこの分野で世界をリードすることを夢見ている。
 最後に、画像やプロトコールを提供してくれた病態生物医学分野のメンバーに感謝したい。
 領域代表 松田道行

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